兵庫県洲本市

no imageふるさとミライカレッジ 事務局

長年の域学連携を通じて構築した活動基盤と地域の連携体制

洲本市ではこれまで、再生可能エネルギーの実装や滞在拠点の整備を起点に、多くの大学と協働したプロジェクトを展開してきました。

プロジェクトの過程で整備してきた「学生滞在拠点」や、「地域貢献型ため池ソーラー発電所」の収益を活用する仕組みなどを通じて、学生を受け入れる環境が徐々に整ってきました。現在では、参画する学生数は年間300人を超えるまでに広がっています。

地域と大学がそれぞれの役割を分担し、町内会や中間支援組織が受入主体として育ってきたことで、取組は再生可能エネルギーや古民家改修、地区の観光活性化など、さまざまな分野へと展開してきました。こうした動きは、関係人口の創出や地域の担い手育成にもつながっています。

現在は、自治体主導の体制から、運営を民間主体に任せる体制へと段階的に移行しつつ、地域住民による自発的な活動を支える制度整備を進めています。官民で連携することにより大学・学生と共創する自走的な体制の構築をめざしています。


木製床と白い壁がある部屋

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▲ 建築学部の学生が設計・施工した滞在拠点(左)
▲ 農業者団体が実施するため池の管理に関するフィールドワーク(右)
 

各事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめました。

事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、本ヒントを参考に背景やプロセスに着目し、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。


 

--目次--

  • 基礎情報
  • 経緯や転換点を生んだ工夫
    • 地域でプロジェクトを少しずつ育てる方針へ転換
    • 短期・中長期の両面で価値を地域へ還元するために学生主体を重視
  • 体制上の工夫
    • 自治体主導から、地域で自走する体制づくりへ
    • “学生を地域のフィールドワークへ送り出す理由”を持つ大学との連携からスタート
    • 町内会等による自主的な地域活動を支援する制度で、住民とともに活動の輪を広げる

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基礎情報

自治体名

兵庫県 洲本市

人口規模
※令和7年度時点

40,226人

連携大学(所在地)

龍谷大学(京都府)、大阪工業大学(大阪府)、近畿大学(大阪府)、武庫川女子大学(兵庫県)、早稲田大学(東京都)、奈良県立大学(奈良県)、名古屋芸術大学(愛知県)、京都橘大学(京都府)、神戸大学(兵庫県)等 全国36大学(2024年度実績)



 

 

 

経緯や転換点を生んだ工夫
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▲年々参加校が増え、活動が活発化している(左)
▲ 売電利益を再投資する地域貢献型ため池ソーラー発電所(右)


地域でプロジェクトを少しずつ育てる方針へ転換

洲本市では、学生による多様なフィールドワークやプロジェクトが展開されています。そのなかで自治体としては当初から、地域に何らかの成果を残していくことも重要だと考えてきました。そのため初期の頃は、地域に「形として残る」プロジェクトにも重点的に取り組んでいました。具体的には、大学の研究知を持ち寄り、相互に提供し合うことで、学生の滞在拠点の整備や地域貢献型のため池ソーラー発電所(農業用のため池にソーラーパネルを浮かべて太陽光発電を行う設備)の整備などが進められてきました。地域貢献型ため池ソーラー発電所は、売電利益をプロジェクトへ再投資する仕組み*7-1として、龍谷大学とともに構築したもので、現在も学生によるプロジェクト推進の基盤となっています。一方で、すべてが順調に成果につながるわけではありません。成果がなかなか見えない状況が続くと、学生のモチベーションに影響が出てしまい、継続が難しくなるプロジェクトもありました。

そこで、洲本市では方針を見直し、最初から大きな成果を求めすぎない方向へと転換してきた経緯があります。まずは地域の受入主体とともに経験値を重ねていくことを重視し、町内会活動の活発化や関係人口の事例づくり、連携大学の拡大など、実現できるところから一つひとつ成果を積み上げ、示していく。その過程で、地域側が主体となってプロジェクトを育ててきました。

現在では、こうして育まれてきたプロジェクトや地域の体制を通じて、成果が地域へ還元されるケースも生まれています。また、地域側が学生に対して、過度に成果を求めないことで、学生に無理な負担がかからず、結果的に関係人口化が促進される状況も生まれています。

*7-1 ため池ソーラー発電所(太陽光発電)で発電した電力を、電力会社に販売することで収益を得る仕組み

 


 

短期・中長期の両面で価値を地域へ還元するために学生主体を重視

プロジェクトのなかでは、「かいぼり(ため池の水抜き)作業」など、比較的短期間で地域に価値を還元できる活動にも取り組んでいます。ただし、こうした作業が単なる「やらされ仕事」になってしまわないよう、事前の調査や課題の整理は学生自身が行う設計にしています。学生が当事者として考え、納得した上で関わることを大切にしているからです。

このプロセスを踏むことで、「根本的な課題に対して有効な解決策を実行している」という学生・地域双方の納得感につながり、中長期的に価値を還元するプロジェクトの創出にも結びついています。

また、龍谷大学では、担当教員だけでなく、実践型教育を支える助手が学生に伴走しています。学生の自由な発想を大切にしながら、同時に地域のニーズから大きくずれないよう、適切に調整する役割を担っており、こうした体制もプロジェクトを支える重要な要素になっています。



体制上の工夫

 

“学生を地域のフィールドワークへ送り出す理由”を持つ大学との連携からスタート

洲本市が大学連携を始めた初期の連携先の一つが、龍谷大学政策学部です。同学部は「地域公共人材の育成」を掲げ、座学と地域での課題解決型学習を組み合わせた教育に取り組んでいます。洲本市では、このような地域へ学生を送り出す明確な理由を持つ大学との協働を通じて、地域課題解決型プロジェクトのモデルを市内で構築し、ノウハウや環境・体制を段階的に整えてきました。こうした積み重ねの結果、連携する大学や町内会の輪も、徐々に広がってきています。


 

町内会等による自主的な地域活動を支援する制度で、住民とともに活動の輪を広げる

洲本市で実施している「洲本市未来投資推進事業」は、住民の自発的な活動を後押しするため、地域活動にかかる事業経費の1/3〜3/4を補助する仕組みです。

この事業では、すべての地域団体を一律に支援するのではなく、自発的な地域団体を支援する方針をとっています。自ら相談に訪れ、大学・学生と連携したプロジェクトなどに取り組みたいと考える地域団体に対して、未来投資推進事業をはじめとする各種制度の活用を案内しながら、丁寧にサポートしています。そこで生まれた成功事例を他地区へ紹介することで、取組の輪が広がっていく好循環が生まれています。

また、進学や就職をきっかけに一度市を離れ、その後Uターンして戻ってきた人たちが、地域への思いを持って相談に訪れるケースも少なくありません。そうしたUターン者同士がつながりながら、活動の輪が広がっていく様子も見られるようになっています。


 

自治体主導から、地域で自走する体制づくりへ

これまで、自治体が大学と地域をつなぐ役割を担ってきましたが、連携する大学の増加に伴い、自治体職員への属人化や業務負担の増加といった課題も顕在化してきました。そこで現在は、その役割を市内の民間団体へと段階的に移していく取組を進めています。

現在では、地域内の複数の組織がコーディネート役を担う体制が、少しずつ定着しつつあります。なかには、学生時代に洲本市で活動経験を積んだ卒業生がNPO法人(域学連携研究所)を立ち上げ、建築士などの専門性を生かしてプロジェクトを推進している事例も生まれています。自治体としても、地域おこし協力隊や地域活性化起業人制度などを活用しながら、こうした動きを人的な側面から支援しています。

あわせて、域学連携に特化した関係人口アプリの開発も進めています。参画する学生への情報発信や、GPS情報を活用した活動データの蓄積、交通費精算の電子化などを通じて、市が担ってきた役割をより効率的かつ高度なものへと発展させていくことをめざしています。

▲ 学生と連携して整備した、古民家を改修した滞在拠点

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