no imageふるさとミライカレッジ 事務局

県・大学の包括的な連携と、県域での大学の教育プログラム受入

本記事では、大学が実施するフィールドワーク型プログラムを地域が受け入れる形で連携している事例として、東京大学による「フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)」について、和歌山県での受入事例を取り上げる。

 


 東京大学が実施する「フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)」は、東京大学の全学を対象とした体験型教育プログラムであり、学生が約一年間にわたり事前学習、現地調査、政策提言を主体的に行うものである。地域から提示された課題に果敢にチャレンジするリーダー人材の育成をめざす大学独自の取組として全国の自治体で展開されている。
 

▲ 現地調査の一環として、地域で活動・地域住民と交流する学生

 

各事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめました。

事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、本ヒントを参考に背景やプロセスに着目し、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。

 

--目次--

  • 基礎情報(プログラム実施主体大学の情報)
  • 概要および大学側の体制面における工夫
    • 大学の運営事務局による、地方自治体と学生とのマッチング
  • 大学における地方自治体と連携した運営設計
    • 大学と地方自治体との連携体制
    • 学生のニーズに応える運営方針と体制の構築
  • 和歌山県における受入事例
    • 「体制」と「大学の教育プログラム受入に至った経緯や転換点」
    • 市町村個別の連携から、教育プログラムの県域展開へと転換
    • 県が窓口となることで生まれた連携の広がり

--

 

基礎情報(プログラム実施主体大学の情報)

 

大学名(所在地)

東京大学(東京都)

プログラム名

フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)

連携自治体名

和歌山県 他/計17都道府県26地域(令和7年度)

 

概要および大学側の体制面における工夫

大学の運営事務局による、地方自治体と学生とのマッチング

 東京大学のフィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)は、学部生・大学院生が地方自治体から提示された地域課題をテーマに、事前調査、現地でのフィールドワーク、事後調査を経て、最終的に地域への提案を行う約1年間の実践型のプログラムである。

本プログラムは、東京大学本部の社会連携推進課が「FS運営事務局」として運営している。事務局は、自治体から学生に提示された課題の内容と、学生の関心や専門分野を踏まえて自治体と学生のマッチングを行う役割を担う。マッチング後は、受入市町村等と応募学生が協働してフィールドワークの内容やスケジュールを設計・調整し、現地調査や地域関係者との意見交換などを通じて調査・活動を進める。最終的には、その成果を地域に提案として共有する形でプログラムが実施されている。

▲ プログラムに参加した学生は、1年間の活動成果を学内で発表する

 

大学における地方自治体と連携した運営設計

大学と地方自治体との連携体制

 本プログラムでは、自治体が地域のニーズを踏まえて学生に提示する地域課題を整理し、大学のFS運営事務局が全国の自治体から集約した課題に対して関心を持つ学生を募集する。

 事務局は、学生の関心や求める経験等を踏まえて、受入市町村と調整を行う。さらに、受入市町村が学生に地域課題をプレゼンする機会を設け、学生が主体的に参画地域を選択できる環境を整えている。

 

学生のニーズに応える運営方針と体制の構築

 当初、大学側がFSに応募する学生として想定していたのは、官公庁を志望する学生だったが、実際には、官公庁志望の学生だけではなく、「地域で活動し、住民と関係を築くこと」そのものに価値を感じる、多様な学生が応募している。

 こうした状況を受け、FSも提案の専門性・実現可能性に過度にこだわるのではなく、「学生がより主体的に地域を自分事として考えること」をより重視する形へと移行した。

 また、学生が主体的に学びを深められるよう、多様な専門性を持つ学内の教職員で構成する「体験型活動運営委員会」を設置しており、特定の担当教員が学生の相談に乗るという形ではなく、学生が必要に応じて専門知を持つ教員へ自発的にアクセスできる体制を整えている。

 学生の参加動機としては、1年間にわたり地域と深く関われる点や、多様な仲間との協働に価値を見出す声が多い。地方出身の学生が自身の故郷と同様の課題を抱える自治体に関心を寄せるケースもあり、こうした意欲に応える形でプログラムの深化を進めている。

▲ 学生が地域で活動する様子

 

和歌山県における受入事例

「体制」と「大学の教育プログラム受入に至った経緯や転換点」

市町村個別の連携から、教育プログラムの県域展開へと転換

 和歌山県内では、2014年以降、東京大学の文学部や先端科学技術研究センター等の研究部局が複数の市町村と個別に連携してきたが、その活動は地域ごとに点在していた。

 転換点となったのは、2022年に新宮市で開催された「東大人文熊野フォーラム」である。このフォーラムでは、研究発表など具体的な成果の共有に加え、大学と和歌山県が地域課題について直接対話する場が設けられた。そのなかで、大学側の「部局単位の個別対応による調整の煩雑さ」と、県側の「窓口を一本化し、市町村の負担を軽減したい」という意向が一致したことから、これが契機となり、大学本部と県との間で包括連携協定が締結されることとなった。

 

県が窓口となることで生まれた連携の広がり

 和歌山県では、東京大学との包括連携協定を踏まえ、同大学の「フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)」に参画し、県が大学との窓口となり、FSの情報を市町村へ案内している。FSは、市町村が地域課題を学生に提示し、学生は関心ある課題地域を選択する仕組みのため、受入には自治体の関与が不可欠である。県が大学との調整や情報共有を担うことで、市町村が参画しやすい環境が整えられた。那智勝浦町では、県から案内を受けて町内の地域団体へ情報を共有し、従来から独自に学生受入を行ってきた色川地域振興推進委員会が連携の意向を示した。これによって町としてもプログラムの参画を決め、2025年に色川地区でFSの受入が開始。県が市町村と大学との間に入ることにより、新たな連携機会が創出された。


 ▲ 東大人文熊野フォーラムで研究者が発表する様子(2025年度)(左)

▲ オンラインで行われた県と大学の包括連携協定締結式(右)

公開範囲 一般公開
公開日時
コメント可能範囲 誰でも書込可能