島根県雲南市

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多様な主体による「チャレンジの連鎖」を生む体制・仕組みの構築

雲南市は、「協働のまちづくり」*9-1および「チャレンジの風土・文化づくり」といったビジョンを基盤に、市の事業として立ち上げた起業塾「幸雲南塾」を一つの転換点として、担い手育成と地域課題解決を一体的に進めてきました。その後、卒塾生が実施していた大学連携の事業が、市主体のU.C.C(雲南コミュニティキャンパス)*9-1へと発展し、地域で生まれた社会起業家と学生などが連携する取組へと広がっています。こうした動きのなかで、多様な主体が関わるチャレンジの連鎖が生まれてきました。大学や学生も、地域での実践を重視した取組を行っており、住民が学生との協働による成果を実感できる経験が積み重ねられてきています。

また、雲南市は「日本一チャレンジにやさしいまち」を掲げ、地域おせっかい会議*9-3などの場づくりを主導することで、住民一人ひとりの思いやアイデアを可視化する取組を進めてきました。あわせて、若者による地域課題解決型の起業・創業を支援する事業を実施し、民間や中間支援組織と連携しながら、共創の仕組みを地域に定着させています。

*9-1 協働のまちづくり…2008年11月1日「雲南市まちづくり基本条約」を制定。住民、議会および自治体が対等な立場に立って、役割と責任を担い合いながら共通の目標に向かって取り組むことを決めた

*9-2 U.C.C(雲南コミュニティキャンパス)…地域の子ども・若者・地域自主組織や、企業による地域課題解決へのチャレンジが進む雲南市を学びのフィールドとして、全国の大学生がフィールドワークやインターンシップを通じ地域課題解決に向けてチャレンジする人材育成プロジェクト
*9-3 地域おせっかい会議…地域住民のやりたいことに対し住民同士でアイデアを出し合う、場づくりの事業

 


キッチンで料理をしている男性たち

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▲ U.C.Cキャンプに参加した学生がさくらの塩漬けづくりを体験する様子(左)
▲ チャレンジ事業の一環で、コミュニティ財団設立を支援するための募金箱制作ワークショップを行う学生(右)


 

各事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめました。

事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、本ヒントを参考に背景やプロセスに着目し、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。


 

--目次

  • 基礎情報
  • 経緯や転換点を生んだ工夫
    • “協働のまちづくり”という方針に向けた行政運営
    • 転換点は、市の事業として立ち上げた「起業塾」
    • 学生参画の成果を住民が実感する機会の創出
  • 体制上の工夫
    • 自治体が民間と連携し、ビジョンを仕組みとして定着させる
    • チャレンジを継続させるための制度化

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基礎情報

自治体名

島根県 雲南市

人口規模
※令和7年度時点

33,803人

連携大学(所在地)

島根大学(島根県)、島根県立大学(島根県)、米子工業高等専門学校(鳥取県)、関西大学(大阪府)、関西学院大学(兵庫県)、新潟工科大学(新潟県)、芝浦工業大学(東京都)、早稲田大学(東京都)、明治大学(東京都)、専修大学(東京都)他


 

 

 

経緯や転換点を生んだ工夫
建物の前に立つ人々

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▲ 第1回幸雲南塾の様子(左)
▲ チャレンジ推進を総合計画に 明記され、活気づく「雲南市スペシャルチャレンジ事業」(右)
 



 

“協働のまちづくり”という方針に向けた行政運営

雲南市では、合併当初から協働のまちづくりを進め、地域自主組織*9-4の設立および活動を支援してきました。自治体が「地域住民が主役」の地域づくりを支える立場として、地域自主組織と対話する「地域円卓会議」などの開催を通じて、現場の声を踏まえながら課題や方針を検討し、施策に反映させています。

地域自主組織では「地域のことは地域で」という考え方のもと、住民の声を踏まえて地域の課題や活動方針を検討し、事業に反映させています。地域自主組織の活動拠点となる交流センター(旧公民館)が住民の活動拠点となり、数々の地域課題解決事例が生まれています。

 

*9-4 地域自主組織…雲南市で2005年から立ち上げられてきた、概ね小学校区単位で構成される住民主体の組織であり、地縁を基盤に多様な世代や組織が連携し、地域課題に応じた共助社会の形成に寄与している




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▲ 地域自主組織のメンバ-と対話する学生




 

転換点は、市の事業として立ち上げた「起業塾」

一方、地域自主組織の支援を続けるなかで、20~30代の若者不足が担い手課題として顕在化していきました。こうした課題認識に加え、他地域の取組からの学びを踏まえ、第二次総合計画に「担い手育成」を明記し、若者による地域課題解決型の起業・創業を支援する「幸雲南塾(現・Seedラボ)」や「雲南市スペシャルチャレンジ事業補助金」を創設するなど、個人のチャレンジを支援する仕組みを立ち上げました。これが、大きな転換点となっています。

幸雲南塾を通じて、「コミュニティナース」*9-5などの社会課題解決型事業が生まれ、起業して地域に残る若者が増えてきました。こうした起業者とも連携しながらプロジェクトを継続的に発展させることで、地域課題の解決と担い手育成が互いに回る循環が生まれています。さらに、担い手育成の動きがU.C.C(雲南コミュニティキャンパス)へと発展し、多様な主体によるチャレンジや横の連携を重視する取組へと広がっていきました。こうした「チャレンジの連鎖」により、大学のゼミや教員・学生と連携した様々なプロジェクトが生まれています。

こうした行政運営を通じて、域内外の多様な人材が担い手として関わりやすい環境が整えられ、チャレンジが生まれています。そして、そうして生まれたチャレンジが、地域課題解決に挑戦したい大学や学生にとって新たな「関わりしろ」となり、さらなる連携の広がりにもつながっています。

 

*9-5 コミュニティナース…看護の専門性を生かしながら、地域住民と一緒に“毎日の楽しい”と“心と身体の健康と安心”をつくる実践のあり方



 

学生参画の成果を住民が実感する機会の創出

雲南市では、大学連携の当初から、学生が提案を行うだけでなく、その提案を実行する役割を担うことを重視してきました。あわせて、学生の参画による成果を住民に「見える形」で可視化してきた点も特徴です。合併時、一部の公共施設再編に関する調査・検討プロジェクトでは、建築学を専攻する大学院生が住民への提案や説明まで一貫して担当し、地域の理解を深めたことで、地域自主組織の活動活性化につながりました。また、雲南市ブランド化プロジェクトにおいても、学生によって作られた制作物が公開されるなど、住民が成果を実感できる機会が積み重ねられてきました。

こうした取組の蓄積により、「外部の若い力が地域活動を前に進める」という実感が住民の間に広がり、域外人材を受け入れる土壌が少しずつ整ってきています。




▲ ブランド化プロジェクトで什器を制作する学生

 


体制上の工夫



 自治体が民間と連携し、ビジョンを仕組みとして定着させる

雲南市では、第二次総合計画において持続可能なまち(安心して暮らし続けられる地域)の実現に向け、「子ども×若者×大人×企業チャレンジ」により地域全体で社会課題を解決する構想である「雲南ソーシャルチャレンジバレー」の実現をめざすことを掲げ、多世代・多主体によるチャレンジを重ねてきました。自治体が単独で事業を進めるのではなく、住民・事業者・自治体が連携して学び合いながら事業を進められるよう、自治体が意図的に場や機会を整えてきた点が、本事例の大きな特徴です。

また、自治体が主催してきた「地域おせっかい会議」などの事業を通じて、住民一人ひとりの「やりたいこと」が共有される場がつくられてきました。自治体と協働する一般社団法人umi等の民間・中間支援組織が、地域側の関係構築やニーズ把握を担い、それを蓄積してきたことで、地域のニーズと大学などをつなぐ共創の体制が地域に定着しています。事業は段階的に民間主導へと移行しており、幸雲南塾やU.C.Cでは民間団体が運営主体となるなど、自治体が掲げてきたビジョンが、具体的な場や仕組み、体制として根付いてきています。


▲ 民間主導へと移行し、地域に活動が根付くU.C.C




チャレンジを継続させるための制度化

雲南市では、「チャレンジの促進」を仕組みとして継続させるために、2019年4月1日に「雲南市チャレンジ推進条例」を施行しました。条例には、「市民がチャレンジする権利を持つこと」や「市長はチャレンジを促進する責務を負うこと」が明記されており、チャレンジを個別の事業や一時的な取り組みにとどめるのではなく、市の基本的な姿勢として制度的に位置づけています。これにより、市長や職員が交代してもチャレンジの連鎖が途切れにくい環境が整えられ、持続的な地域課題解決を支える基盤が整えられています。

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