岐阜県中津川市

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木造建築の学びを山林保全につなぐ学生組織の成立と地域の支援体制

中津川市加子母地区では、大学と連携したフィールドワークとして、学生が森林資源の保全や木造建築を学び、その成果を地域へ還元する「加子母木匠塾」が実施されています。学生たちは実際に山林の現場に入り、地域の暮らしや産業に触れながら制作活動に取り組んでいます。

この活動は30年前、大学側にあった「木造建築を体系的に学ぶ機会が乏しい」という課題意識と、地域側にあった「林業や山村の現状を若い世代に伝えたい」との思いを背景に始まり、学生が地域に滞在して木造建築の設計・制作に取り組み、その成果を地域へ還元する活動へと発展してきました。

こうした背景のもと、加子母木匠塾に対する地域住民、地元工務店、自治体、NPO法人かしもむら等による伴走的な支援体制が形成され、現在では学生が教員に過度に依存することなく、学生が主体的に企画・運営を担う体制へと発展しています。さらに、住民との交流も役割分担の仕組みとして組み込まれており、学生が継続的に地域と関わりながら活動できる土壌が着実に育まれています。



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▲ 地域の林業家に教わりながら間伐作業を体験する学生(左)
▲ 制作物の上棟を行う学生 (右)


 

各事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめました。

事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、本ヒントを参考に背景やプロセスに着目し、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。

--目次--

  • 基礎情報
  • 経緯や転換点を生んだ工夫
    • 学生の自主運営組織化
    • 拠点整備により、大学間交流・関係人口化を促進
  • 体制上の工夫
    • 地域住民による学生自主運営組織への支援
    • 学生の自主運営組織を支える「幹部」の役割
    • 学生と住民の交流を仕組み化

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基礎情報

自治体名

岐阜県 中津川市

人口規模
※令和7年度時点

72,449人

連携大学(所在地)

京都大学(京都府)、京都工芸繊維大学(京都府)、京都芸術大学(京都府)、立命館大学(京都府、滋賀県)、滋賀県立大学(滋賀県)、金沢工業大学(石川県)、名城大学(愛知県)、東洋大学(東京都、埼玉県)


 

 

 

 

 

 

 

経緯や転換点を生んだ工夫 
会議室でワインを飲んでいる男性

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▲ 「ふれあいのやかた」でワークショップに取り組む学生(左)
▲ 旧高根村で開かれた第1回開講式の様子(「群居」第47号より)(右)
 

 


 

 

学生の自主運営組織化

中津川市の加子母地区一帯は、豊かな森林資源を有する一方で、その利活用や保全は長年地域の課題でした。大学と連携した学生のフィールドワークは、もともとサマースクールという形で行われ、運営の中心は大学教員や地域関係者でした。この取組を始めた当時の村長は、地域の課題意識を踏まえ、「山林保全」と「教育」を掛け合わせる必要性を感じていました。そうして立ち上げられたのが、「加子母木匠塾」でした

加子母木匠塾では、学生が山に入って木材を切り出したり、木造建築の技法を学んだりすることを通じて、山林保全の現状や地域についても考え、学ぶ視点を養ってきました。活動のなかで生まれた成果は、地域の公共物として還元してきました。

また、木匠塾では当初から、自治体や地域関係者による「教育的な関わり」が重視されてきました。学生が地域社会の一員として活動するうえでのふるまいや挨拶など、基本的な部分まで丁寧に伝えてきたことも特徴です。

こうした積み重ねによって、住民と学生の間に少しずつ信頼関係が育まれ、地元工務店による技術指導や資材提供、住民から学生への食材のおすそ分けといった多面的な協力体制が築かれてきました。地域のなかに活動を支える協力者が増えたことに加え、活動を重ねるなかで学生組織としての企画・運営能力も高まったことで、木匠塾は現在、大学教員の引率を必要としない「学生の自主運営組織」として運営される形へと発展していますが、こうした学生主体の運営は、地域住民、地元工務店、自治体、NPO法人かしもむら等による伴走的な支援を前提として成り立っているのです。

 

拠点整備により、大学間交流・関係人口化を促進

2002年には、学生の滞在拠点となる施設「ふれあいのやかた かしも(通称・やかた)」が地域内に整備されました。この施設は、地場産材をふんだんに使用した木造の交流・研修施設で、木匠塾の合宿期間中には各地から集まる学生同士が宿泊や食事、ワークショップ等を行ったり、地元工務店や中間支援組織の大人たちと学生との打合せ場所として使われたりするなど、学生にとって単なる宿泊場所ではなく、加子母木匠塾の活動を支える拠点として位置づけられています。

それ以降、加子母木匠塾に参加する学生たちは「やかた」で共同生活を送りながら活動に取り組み、大学や学年の枠を超えた日常的な交流を重ねてきました。寝食を共にし、作業の合間にも対話を重ねるなかで、学生同士のあいだには、単発のプログラム参加を超えた「木匠塾コミュニティ」への帰属意識が育まれていきます。

こうした滞在型の環境は、学生にとって学内の授業だけでは得がたい学びの場となりました。その結果、大学入学から卒業まで木匠塾に関わったり、卒業後も加子母地区と関わり続けたりする学生も生まれ、地域との関係が一過性で終わらない土壌が形づくられていったのです。
山の中の道

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▲ 学生の滞在・活動拠点の「ふれあいのやかた かしも」は2002年に竣工した

 

体制上の工夫 


 

地域住民による学生自主運営組織への支援 

加子母木匠塾は、大学や自治体から支援を受けつつもそれに依存することなく、学生主体でフィールドワークを実施する体制が構築されています。大学によっては、大学組織が補助金申請など活動継続に必要な最低限のサポートを行い、自治体側も地区内にある加子母総合事務所が施設利用や物品借用を支援する役割を担っています。

また、欠かせないのが住民からの多面的な協力です。建築技術の指導に加え、学生が企画する交流イベントへの参加や受入、滞在場所や作業場の提供、さらには制作テーマの提案に至るまで、木匠塾の活動全般が住民の関与によって支えられています。学生は地域の一員として迎え入れられ、住民との日常的な関係性のなかで実践を重ねています。

こうした住民と学生をつなぐ調整役を担うのが、NPO法人かしもむらです。当初は自治体(旧加子母村役場)が担っていた調整機能を同法人が引き継いでいます。同法人は市町村合併後、実施主体である加子母むらづくり協議会を母体に設立し、人口減少や高齢化、産業の担い手不足など、地域が抱える課題解決や地域づくりを目的に活動しています。その取組の一つに加子母木匠塾の運営を位置付け、大学・地域・学生をつなぐ事務局機能や対外調整を担っています。



学生の自主運営組織を支える「幹部」の役割

加子母木匠塾では、学生の自主運営組織のなかに「幹部」という役割を設けることで、学生自身が組織全体を統括しながら、主体的に運営できる体制をつくっています。

幹部を担う学生は、NPOなどの中間支援組織や住民と連携しつつ、週1回のオンライン会議や月1回の現地会合を重ねています。そこでは、年間の方針や企画についての合意形成に加え、地元工務店と進める制作物の内容検討や、制作地の視察なども行われています。

また、地域でのふるまいについても、幹部を中心に上級生が後輩に声をかけ、自然と教え合う関係が育くまれてきました。こうした幹部の役割が着実に機能することで、これまで地域側が個々の学生に対して担ってきた指導や調整の負担も、徐々に分散されるようになっています。


▲ 現地会合では、学生が地域の大人たちと活動方針を協議する

 

学生と住民の交流を仕組み化

学生の自主運営組織内の幹部のなかで、イベント、生活、制作物の設計など、役割を分担しながら活動を進めています。こうした分業によって一人ひとりの負担を抑え、無理なく活動を続けられる体制がつくられています。

例えば、地域住民と学生の接点を生み出す目的で行う「交流イベント」の企画・調整を担っているのが「企画係」です。学生による自治的な活動は、特に立ち上げ初期には、活動時の騒音などを理由に地域住民から声が寄せられることもありました。

そこで、交流を通じて地域住民と関係を築くことを重視するようになり、農家での収穫体験や夏祭りの運営補助など、企画係を中心にさまざまな企画を実施してきました。木造建築の制作にとどまらず、学生が地域住民と顔を合わせる機会を仕組み化することで、学生の活動が少しずつ地域に受け入れられるようになっていきました。


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▲ 学生が植えたもち米で餅を作り、餅投げで住民にふるまった

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