岩手県陸前高田市

no imageふるさとミライカレッジ 事務局

震災復興後の地に立ち、ふるさとや自らを互いに省みる国際色豊かな経験学習


 陸前高田市では、立教大学グローバル教育センターが単位認定科目として2015年度から実施している「課題解決型教育プログラム」が行われています。スタート当初は、東日本大震災の被災地をフィールドに、復興支援へ貢献することを目的とした取り組みでした。
 その後、プログラムは進化を重ね、現在では「SDGs 11:住み続けられるまちづくりを」をテーマに掲げています。震災復興という文脈を大切にしながらも、より広い視点で持続可能な地域づくりや関係人口の創出へと重点を移しています。
このプログラムの特徴のひとつは、その国際性です。立教大学の学生だけでなく、立教大学と連携する海外大学の学生も参加し、原則として英語で実施されています。夏季休暇中の宿泊を伴う現地研修を軸に、自治体職員や地元事業者へのヒアリング、現地視察などを行い、最終的には地域の将来を見据えた課題解決策を提案します。
 こうした取り組みが可能になっている背景には、陸前高田市との20年以上にわたる連携実績と信頼関係があります。単発の交流ではなく、長年積み重ねてきた関係性を土台に、大学全体として組織的に推進されている点も、このプログラムの大きな強みといえるでしょう。
 




 ▲ 地元で活動する団体、一般社団法人長洞元気村で行われる「震災リスク軽減のためのクロスロードゲーム」の様子(左)
▲ 一般社団法人長洞元気村で提供される地元の食材をふんだんに使った料理の数々:国際色豊かな学生の多様な食に対応できるようになったことが長続きの秘訣(右)


 

各事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめました。
事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、本ヒントを参考に背景やプロセスに着目し、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。

 

--目次--

  • 基礎情報
  • 経緯や転換点を生んだ工夫
    • 多国籍な共創の場
    • プログラムの概要
  • 体制上の工夫
    • プログラムの質的向上
    • 強固な信頼を寄せ合うコーディネーションチームと組織的基盤

--

 

基礎情報

自治体名

岩手県 陸前高田市

人口規模
※令和7年度時点

16,802人

連携大学(所在地)

立教大学(東京都)、海外の大学(スタンフォード大学、香港大学、ボストン大学、キーン大学、サンタクララ大学、シンガポール国立大学等)
※海外の大学については、市と海外大学との協定関係に基づくものではなく、立教大学と海外大学との連携関係のなかで、陸前高田市で実施されるプログラムに参加しているものである


 

 

 

経緯や転換点を生んだ工夫

▲ 震災直後の立教大学による支援ボランティア(左)
▲ 震災遺構 気仙中学校の見学(2025年)(右)
 



 

多国籍な共創の場

「陸前高田プロジェクト」は、立教大学が単位認定科目として継続してきた課題解決型の学びの一つです。もともとは被災地である陸前高田をフィールドに、復興にどう貢献できるかを考えることから始まりましたが、現在は「SDGs 11:住み続けられるまちづくりを」を共通テーマに掲げ、地方都市の持続可能性を広く問い直すプログラムへと発展しています。

プログラムには立教大学の学生に加え、スタンフォード大学や香港大学など海外大学の学生も参加しています。多様な背景をもつ学生が同じ地域を歩き、同じ住民の声を聞きながら議論を重ねることで、視点の違いが自然と交差する場が生まれています。

中間支援組織であるVIA*1の専門的な知見を生かして、参加者それぞれの経験で得た教訓を振り返り、次の経験へとつなげる「経験学習*2」という手法を、学びの軸として据えています。単なる視察ではなく、丁寧に設計されたリフレクションの時間や1対1のメンタリング、地域住民の家庭を訪ねるホームビジットなどを通じて、体験を言語化し、互いに省察を深めていきます。学生は、自らのリーダーシップや価値観を問い直しながら、地域と向き合うことになります。

*1 VIA(Volunteers in Asia)…1963 年よりアメリカとアジアの文化交流に取り組んでいる独立非営利団体
*2 経験学習…それぞれの経験で得た教訓を振り返り、次の経験につなげていく学習方法
 

 

プログラムの概要

現地研修を中心とし、先進的な教育手法も織り交ぜられたプログラムが展開されています。

時期・日程

工程の概要

主な活動内容

事前研修

オリエン
テーションと
基礎学習

立教大生と海外大学生が合流し、アイスブレイクやプログラムの目的共有、異文化間コミュニケーションの準備を行う。

現地研修(前半)

「震災の歩み」を学ぶ

スカベンジャーハント(まち歩き)、東日本大震災津波伝承館や震災遺構(気仙中学校等)の視察、語り部による体験談の聴講を通じ、震災とその教訓を深く理解する。

現地研修(後半)

「持続可能な
 まちづくり」
を考える

行政(市役所)や地元事業者へのヒアリング、ホームビジット、ワークショップを実施。復興後の課題や新たな事業創出について学び、SDGsの視点から地域の未来を議論する。

現地研修(最終日)

提案のまとめとリフレクション

現地研修における学びを統合し、グループごとに解決策や提案をまとめる作業を行う。また、個別メンタリングや日々の振り返り(リフレクション)を通じて自己省察を深める。

事後研修
・報告会

最終成果の発表

地元のキーパーソンや住民に対し、学生が考案した「持続可能なまちづくり」への提案をプレゼンテーションする。終了後、プログラム全体の総括を行う。


 
体制上の工夫

 

プログラムの質的向上

教育面では、教室でのレクチャーを減らし、地域の自然や日々の暮らしに触れる経験型の学びを充実させています。また、地域スピーカーとして、震災当時は中高生だった若手起業家や、Uターン移住者を招き、学生にとって身近な存在から人生観やこれまでの経験を学べる場も設けています。

施設間の移動には、地元のグリーンスローモビリティ*3を活用する場合もあり、移動そのものの効果や意味を学生が客観的に振り返り、そこから得た気づきを次のアクションや考察に活かす「経験学習」の一環となっています。こうした取組を通じて、学生の能動的な学習を促す工夫を行っています。

さらに、プログラムへの参加前後で、学生が自らの行動変容を自己評価する「グローバル基幹力ルーブリック」という評価手法を利用し、リーダーシップや行動の変化を中長期的に測定しています。測定結果等のデータ活用方法を今後検討する予定です。
 

*3 グリーンスローモビリティ(グリスロ)…時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービス



強固な信頼を寄せ合うコーディネーションチームと組織的基盤

取組が持続化するポイントとして、4つの特徴が考えられます。

取組が持続化するポイントとして、4つの特徴が考えられます。

1. 大学の組織的推進:立教大学では、陸前高田市を「重点支援地域」と位置づけ、大学全体として組織的にプログラムを推進しています。2003年から続く林業体験などの活動実績を土台に、包括連携協定も締結し、単発ではない継続的な関わりを築いてきました。

2. コーディネート体制:運営面では、陸前高田市において大学等との連携活動を主導する地域コーディネーターが、大学側の教育意図を踏まえながら、地域スピーカーや訪問先の調整を担っています。また、全体のコーディネートは立教大学グローバル教育センター客員准教授の髙井明子氏が、教育面のコーディネートは兼任講師であるVIAのYuki Ueda氏が担当し、それぞれが中間支援の役割を分担することで、無理のない運営体制が整えられています。

3. 財源とインセンティブ:立教大学グローバル教育センターの予算を活用してプログラムを運営しており、正規科目として2単位を付与しています。また、立教大生は学内の援助金制度の活用により、参加費用の一部補助が受けられます。

4. 現地拠点と運営効率の確保:地元の岩手大学と共同で交流活動拠点を設置し、地域との日常的な関係を保ってきました。2025年にはサテライト拠点を新設・移転することで、より安定した拠点運営をめざしています。カリキュラム面でも、前年までの実施内容と結果を踏まえたPDCAサイクルによるプログラムの改善を重ね、運営の効率化と教育の質の両立を図っています。


▲ 一般社団法人長洞元気村の村上誠二氏=写真左=と地域コーディネーターの古谷恵一氏(左)
▲ 2025年に開設した「立教大学陸前高田サテライト拠点」(右)

公開範囲 一般公開
公開日時
コメント可能範囲 誰でも書込可能