ふるさとミライカレッジ 事務局
若者の再訪率を高める仕掛けと地域内外関係者の連携
南魚沼市では、人口減少や若者流出といった課題を背景に、U・Iターンを促進する取組を進めてきました。こうしたなか、自治体は地域の民間組織との関係構築を重ね、中間支援組織が実施してきた社会教育プログラムを、「若者の回帰意識醸成」という政策目的のもとで市の事業として取り入れ、発展させてきました。 また、大学生向けのプログラムに加え、地元中高生向けの社会教育プログラムやふるさとワーキングホリデー等を組み合わせて展開してきたことが、学生が長期的に地域と関わるための「関わりしろ」の創出につながりました。中高生向けプログラムにおける運営側の役割提供や、滞在拠点での交流体験を通じて、学生の地域への愛着も育まれています。 大学連携においては、地域の中間支援組織がハブとなり、学生が段階的に関与できる仕組みを整えています。これにより、大学教員の負担を抑えつつ、持続的に運営できる連携体制の構築が実現しています。 |
▲ 公共施設の改修・利活用プログラムに参加する学生(左)
▲ 古民家を改修した学生の活動拠点(右)
各事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめました。
事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、本ヒントを参考に背景やプロセスに着目し、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。
--目次--
- 基礎情報
- 経緯や転換点を生んだ工夫
- 民間の取組に着目し、若者の回帰意識醸成を促進
- 学生の継続的関与を促す「関わりしろ提供」
- 体制上の工夫
- 中間支援組織がハブとなり、持続的に大学等との連携を推進する体制を構築
- 大学連携の運用設計と、大学・地域側の役割
基礎情報
自治体名 | 新潟県 南魚沼市 |
人口規模 | 51,603人 |
連携大学(所在地) | 法政大学(東京都)、大妻女子大学(東京都)、共立女子大学(東京都)、専修大学(東京都)、東京家政学院大学(東京都)、二松学舎大学(東京都)、早稲田大学(東京都)、明治大学(東京都)、青山学院大学(東京都)、立教大学(東京都)、大正大学(東京都)、東洋大学(東京都)、新潟大学(新潟県)、上越教育大学(新潟県)、国際大学(新潟県)他 |
経緯や転換点を生んだ工夫


▲ YouKeyプロジェクト(左)
▲ 田植えイベント後に地元の子どもたちと交流する学生(右)
民間の取組に着目し、若者の回帰意識醸成を促進
南魚沼市では、人口減少や若い世代の都市部への流出が進むなかで、単にU・Iターンを促すだけでなく、若者自身に自発的な「回帰意識」芽生えさせること、そして回帰後の就業機会を創出することが必要だと考えられてきました。
こうした課題意識のもと、自治体は地域の民間組織が実施してきた社会教育プログラムに着目しました。それを単なる学びの場としてではなく、「若者の回帰意識を醸成する」という政策目的のもとで捉え直し、市の関係人口施策として位置づけています。地域の魅力や課題を学生自らが発見する学びの機会を社会教育として設計するとともに、総務省の「ふるさとワーキングホリデー」(総務省事業の一つで、都市部の若者が地方に一定期間滞在し、働いて収入を得ながら地域住民との交流や学びを深める滞在型交流事業)などの施策とも組み合わせながら実装してきました。
その結果、社会教育プログラムを関係人口施策の中核に据えることで、地域の魅力や課題に自ら気づいた学生の回帰意識が醸成され、再訪率が40%を超えるなど、継続的な関わりにつながる成果が生まれています。地元中高生向けの社会教育とも一体的に展開されていることから、地元中高生の間でも大学進学への意欲が高まったという声が聞かれるようになっています。
学生の継続的関与を促す「関わりしろ提供」
南魚沼市では、単発的な訪問で終わらせず、長期的な関与へとつなげることで、学生が関わった成果を住民へ還元していくことを大切にしています。そのため、学生の継続的な関与を支える「関わりしろ提供」に力を入れてきました。
具体的には、地元の中高生向けの社会教育プログラムと連携し、その運営主体を大学生に担ってもらうなど、大学生が再訪して運営側の役割を担える仕組みを整えています。この社会教育プログラムは、地元中高生が地域で「やりたい」と思うことを形にする探求型のプログラムで、運営を任された大学生はプログラムの設計を担いながら、少し年上の立場から中高生に伴走しています。
また、古民家を改修した「南魚沼市多世代交流拠点(宿泊・滞在拠点)」を、中間支援組織の「愛・南魚沼みらい塾」が学生向けの安価な滞在・交流拠点として提供しています。こうした環境が整ったことで、学生同士や学生と地域住民との交流が自然と生まれ、学生にとっても「思い入れのある場所」や「自分を覚えてくれている人がいる場所」だと感じられるようになってきました。
このように、一度参加者として来訪した学生が次に運営主体として関わる機会に加え、学生同士、さらには地域住民との関わるきっかけを「関わりしろ」として提供しています。
さらに、こうした実践を積み重ねるなかで、地域側にも「学生に任せてみよう」という経験と信頼が蓄積され、公共施設の改修や利活用といった地域課題に学生が主体となって取り組むプロジェクトなど、新たな挑戦の立ち上げへとつながっています。
体制上の工夫
中間支援組織がハブとなり、持続的に大学等との連携を推進する体制を構築
南魚沼市では、地域の民間組織(中間支援組織)である愛・南魚沼みらい塾が各種プログラムの運営を担い、自治体は資金面などで支援しながら連携する体制をとっています。愛・南魚沼みらい塾は、地域教育を支援する民間組織として、行政の立場でまちづくりに関わってきた小林氏と、教育現場に携わってきた倉田氏によって、学校と地域をつなぐネットワークの構築を目的に設立されました。
理事には、まちづくりに関わる地元人材が複数参画しており、こうした体制が、各自治会エリアにおける学生受入を可能にしています。
大学連携の起点となった大正大学からの学生受入にあたっては、自治体として担当課職員のみで対応することが難しいと判断し、みらい塾へコーディネートを依頼しました。小林氏がこれまでに培ってきた自治体とのつながりや、自治体の担当課長がみらい塾の理念に共感していたことを背景に、こうした連携が実現しています。
このような自治体と民間組織が連携し、関係構築を重ねてきた接点があったことで、みらい塾が担ってきた社会教育プログラムを、市の事業として展開していく流れへとつながっています。
▲ 地元住民と対話を重ねる学生
大学連携の運用設計と、大学・地域側の役割
大正大学の学生受入では、2年次は大学側プログラムに基づくフィールドワーク、3年次以降は学生が各自で設定した研究課題に基づく現地学習とし、学年に応じて段階的に関与を深められる設計がとられています。2年次のプログラムは、大学と地域の中間支援組織が連携して設計し、3年次以降はゼミ単位で教員が研究課題の設定をサポートしています。
授業立ち上げ当初は、大学教員が「地域担当」として対応を担っていましたが、連携地域の増加に加え、現地ならではの知見の必要性が高まってきました。そこで、地域事情に精通した中間支援組織のメンバーを非常勤講師として登用して現地で学生を受け入れる体制へと移行しました。この体制移行により、教員の負担が軽減されただけでなく、地域側も目的意識をもって学生の受入や伴走に関われる仕組みが構築されていきました。
また、南魚沼市をフィールドに、自分軸の探求や起業家精神を学ぶ学生向けのプログラム「YouKeyカレッジ」では、国際大学等と連携し、学生自身が主体となって「やりたいこと」を探求する機会が提供されています。本プログラムにおいては、教員は講師という立場で関与する形をとっています。
学生は、地域の自治会や地域づくり協議会と対話を重ねながら、地域課題の解決に向けた取組を共に進めています。また、古民家改修等の際しては、地元工務店などの協力を得ながら進めるプロジェクトを推進しています。このように、地域住民と協力・共創する有機的な関係性が構築されています。
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