山形県小国町は、ブナ林を中心とした豊かな自然環境に恵まれ、マタギ文化をはじめとする「ぶな文化」と呼ばれる独自の生活文化を大切に受け継いできた町です。地域住民と大学生が力を合わせて地域の課題解決に取り組む「域学連携」の活動を、平成25年頃から続けています。 しかし新型コロナウイルスの影響で学生の来訪や交流の機会が大きく減り、これまで築いてきたつながりが少し薄れてしまう時期もありました。また、人口減少や少子高齢化により、ぶな文化の担い手不足も課題となっていました。こうした状況を踏まえ、大学生の視点や発想を生かしながら「ぶな文化」をテーマとした学びと実践の場を改めてつくり、地域文化の再発見・継承と関係人口の創出を目指し、令和7年度「ふるさとミライカレッジ」モデル実証事業に参画しました。 早稲田大学・新潟大学・東北芸術工科大学から延べ100名以上の学生が、年間を通じて約20回の合宿型フィールドワークで小国町を訪れ、ぶな文化をテーマにした講座や地域の方々への聞き取り・記録活動、地域資源を生かしたビジネスプランの検討など、幅広い取り組みを行いました。 なかでも、学生が考えたビジネスプランが地域の事業者を巻き込みながら形になり始めるなど、ぶな文化を新しいかたちで未来につなげる小さな一歩が生まれています。今後は、こうした活動で築かれた大学や地域住民とのネットワークを生かしながら、継続的な域学連携の取り組みを進めていく予定です。 |
基礎情報
| 自治体名 | 山形県小国町 |
| 人口規模 ※令和7年度時点 | 約6,500人 |
| 連携大学等(所在地) ※令和7年度時点 | 早稲田大学(東京都新宿区)、新潟大学(新潟県新潟市) 東北芸術工科大学(山形県山形市) |
取り組み自治体の声
Q1. 活動の中で印象に残っている場面はありますか?
A1. 熊の毛皮を使ったビジネスプランが、商工会青年部や町内の事業者を巻き込みながら試作品づくりまで進んだことです。学生が町内のイベントで試作品を販売する場面もあり、学生ならではのアイデアと地域の方々の協力が重なって、思いがけないところから新しい動きが生まれていく様子を見られたのは印象に残っています。
Q2. 本取組を実施してみて、「やってよかった」と感じたことはありますか?
A2. コロナ禍以降、都会から地方に足を運ぶ機会自体がぐっと減ってしまった中で、学生たちが気軽に小国町を訪れるきっかけになったことです。実際に移住しなくても、少しの間だけでも田舎の暮らしに触れてみると、感じ方はずいぶん変わるものだと思っています。そうした出会いの機会をつくれたことは、本当にありがたく感じています。
▲ ビジネスプラン検討・地域事業者との協力の様子
Q3. 取り組みを通じて、地域や庁内にどのような変化や気づきがありましたか?
A3. 以前は「行政と学生」という関係が中心で、地域住民の皆さんが直接関わる機会はそれほど多くありませんでした。今回、学生がフィールドワークや聞き取り・記録活動を通じて住民の方と直接顔を合わせる機会が増えたことで、地域の方から「もっと継続的に関わりたい」という声があがるなど、一人ひとりのつながりが生まれ、地域側にも主体的に関わろうという気持ちが芽生えてきました。高校生からも「今度また大学生は来ないんですか」という声があがるなど、大学生が高校生にとって少し年上の「お兄さん・お姉さん」のような、ちょうどいい距離感の存在になっていて、大人と高校生だけでは生まれない関わりができていると感じています。
町としても、これまで学生の募集や受け入れ、地域との細かい調整をすべて行政だけで担っていましたが、地域コーディネーターの方々と役割分担する体制に移行したことで、事務的な負担がかなり軽くなりました。行政ですべてを抱え込むのではなく、民間の事業者と連携する形に変わったことは、町にとっても大きな変化だったと感じています。こうした役割分担によって、大学との連携効果を最大限に引き出せるようになったと思います。
▲ 地域住民からマタギ講座を受けている様子
▲ 地域住民への聞き取り調査を行う様子
▲ 森林資源を活かした観光プランの広告アイデアを考えるワークショップの様子
Q4. 今後この取組をどのように続けたいですか?また、参画を検討している自治体へのメッセージをお願いします。
A4. ビジネスプランのような形になる成果は、すぐには出ないこともあります。それでも、大学生と地域の交流そのものに長期的なメリットがあると考えているので、短期的な成果だけで判断して連携をやめるのではなく、今回築いた大学や地域住民とのネットワークを生かしながら続けていきたいと思っています。小国町は以前から「協働人口」として町外の方とも一緒にまちづくりを進めてきましたので、その姿勢は今後も変わらないと思います。
これから取り組む自治体の方には、地域側で学生と関わる窓口を担当者一人に絞らないことをお勧めします。ずっと地元に住んでいる方はもちろん、地域おこし協力隊や移住した方など、様々な地域の方と学生とがじっくり話す時間を意図的に確保したことで、担当者を介さずに、地域の方と学生が直接つながることができました。長く地域に関わり続けてもらうためには、こうした関係づくりが大切だと感じています。
▲ 学生同士が交流する様子
コメント
コメントはまだありません