ふるさとミライカレッジ 事務局
挑戦者が増える町へ ──
「ツキガタイケン」がひらく月形町の未来
| 北海道月形町(人口約2,600人)では、少子高齢化や若者の町外流出が進むなか、地域の「人のつながり」を保ち、次の担い手をどう育てるかが課題となっていました。そこで町は、令和7年度に総務省「ふるさとミライカレッジ」のモデル事業を活用し、学生が地域に滞在しながら課題解決に取り組む「ツキガタイケン」を本格化しました。 学生が設立した一般社団法人「まちのいりぐち」を中核に、行政・大学・民間が連携し、農業・福祉・アート・教育の4分野でフィールドワークを展開した結果、49名の参加者のうち、39名が複数回訪れました。一過性の体験にとどまらない関係人口*1づくりにつながっています。 |
事例のポイントを、「共創まちづくり」の観点から“読み解くヒント”としてまとめています。事例はそのまま模倣することが難しいからこそ、背景やプロセスに着目し、ご自身の地域における実態や立場との類似点・相違点を意識しながら、実践に向けた学びの手がかりとしてご活用ください。
▲ツキガタイケンで地域に滞在する学生の様子
目次
- 基礎情報
- 地域の抱える課題感
- 人口減少と若者の町外流出
- 地域の担い手・滞在拠点の不足
- 最初のアクション
- 「ツキビズキャンプ」から広がった地域活性化の裾野
- 学生主体の団体「まちのいりぐち」設立と「ツキガタイケン」の本格始動
- モデル事業の具体的な内容
- 農業・福祉・アート・教育の4分野で展開した「ツキガタイケン」
- 「まちのいりぐち」を中核に据えた自走型の地域運営モデル
- 空き家改修から生まれた地域交流拠点「L’heure Bleue(るーるぶるー)」
- 苦労話・工夫
- 「2週間の滞在」から「週末ごとの受入れ」へ
- 「地域として何を解決したいか」が定まらず、方向性が曖昧に
- 取組の成果と今後の展望
基礎情報
| 自治体名 | 北海道樺戸郡月形町 |
| 人口規模 ※令和7年度時点 | 約2,600人 |
| 連携大学(所在地) | 北海道大学(北海道) |
地域の抱える課題感
月形町は人口約2,600人の町で、少子高齢化や単身高齢世帯の増加が進み、介護保険では対応しにくい日常の困りごとをどう支えるか、地域のつながりをどう保つかが課題となっていました。町内には大学などの高等教育機関がなく、多くの若者が進学・就職を機に札幌などへ移る一方、月形町を「挑戦できる地域」として知ってもらう機会も限られていました。
また、空き家や遊休施設は増えているものの、学生など町外の人が継続的に滞在できる場所や、地域内外の多世代が交流する機会は十分ではありませんでした。地域行事や団体の担い手が固定化・高齢化するなか、外から訪れる若者との関わりを、次の世代の育成や新たな地域活動につなげることが求められていました。
▲月形町の田園風景。田畑と森に囲まれた人口約2,600人の町
最初のアクション
▍ 「ツキビズキャンプ」から広がった地域活性化の裾野
月形町では令和5年度、まちづくり任意団体「つきがたDesign」が北海道大学と連携し、大学生・社会人向けのワークショップ「ツキビズキャンプ」を始めました。「まちに挑戦者を増やす」を掲げ、地域課題を題材に事業案を考え、発表後も伴走支援を行うことで、アイデアを実践につなげる取組です。
令和6年度には、中高生向けの「ツキビズキャンプJr」へ対象を広げ、世代を問わず挑戦を後押しする取組へと展開しました。
▲「ツキビズキャンプ」の様子。大学生や社会人が事業案づくりに取り組む
▍ 学生主体の団体「まちのいりぐち」設立と「ツキガタイケン」の本格始動
ツキビズキャンプ第1期に参加した北海道大学生の西岡氏は、発表後の伴走支援を受けながら構想を具体化し、令和6年度に一般社団法人「まちのいりぐち」を設立しました。大学・自治体・地元企業をつなぎ、学生の挑戦を地域で実践するための体制づくりを進めました。
この流れを受けて立ち上がった「ツキガタイケン」は、令和7年度に総務省「ふるさとミライカレッジ」のモデル事業に採択されました。町が予算管理と地域調整、まちのいりぐちが学生の受入れと現場運営を担い、民間が前面に立ち、行政が支える役割分担で事業を進めました。
モデル事業の具体的な内容
▍ 農業・福祉・アート・教育の4分野で展開した「ツキガタイケン」
令和7年9月から、農業・福祉・アート・教育の4分野でフィールドワークを実施しました。農業分野の「ツキビズキャンプミニ」では、学生が農家に聞き取りを行い、人手不足の背景に、労働力だけでなく経営規模を縮小せざるを得ない事情があることを確認しました。そこから、多世代が参加できる人材マッチングや規格外品を活用した事業案が生まれました。
福祉分野の「ツイデニ!」では、電球交換やスマートフォンの使い方、雪かきなど、介護保険では対応しにくい高齢者の困りごとを学生が有償で手伝いました。住民から直接感謝を受ける経験は、学生が月形町を「また訪れたい」と感じるきっかけにもなりました。
アート分野の「ゆきのアトリエ」では、雪とドライフラワーを使った作品づくりを通じて学生と地域の親子が交流し、教育分野の「グローバルカフェ」では、留学生と子どもたちがスポーツや自然体験を楽しみました。
▲農作業を体験する学生(左)
▲「ツイデニ!」で高齢者の日常の困りごとを手伝う学生(右)
▍ 「まちのいりぐち」を中核に据えた自走型の地域運営モデル
運営の中核を担ったのは、学生が立ち上げた「まちのいりぐち」です。学生の募集・受入れから地域との調整までを担い、月形町、北海道大学、つきがたDesign、キッチハイクなどがそれぞれの役割で支える体制を整えました。平日に参加しにくい学生も学業と両立しながら地域に関われる、継続型の運営を目指したものです。
▲月形町・大学・まちのいりぐち・民間パートナーによる連携体制図
▍ 空き家改修から生まれた地域交流拠点「L’heure Bleue(るーるぶるー)」
ツキガタイケンの始動にあたり、まちのいりぐちは町内の空き家を学生・住民とDIYで改修し、交流拠点「L’heure Bleue(るーるぶるー)」を整備しました。宿泊施設としてだけでなく、学生が滞在しながら住民と日常的に関われる場所として、短期滞在型プログラムの受入れ拠点に活用しています。
一過性のイベントで終わらせず、学生が繰り返し訪れて住民と顔を合わせる「入り口」を日常の中につくったことが、その後の活動を支える土台となりました。
▲学生と地域住民が一緒に進めた「L’heure Bleue」のDIY改修
▲外壁に壁面アートが描かれた「L’heure Bleue」(左)、整備後の学生用個室(右)
苦労話・工夫
▍ 「2週間の滞在」から「週末ごとの受入れ」へ
当初は2週間の滞在型インターンを計画しましたが、学業との両立が難しく、応募者が計画人数に届きませんでした。そこで、分野ごとに土日を中心とする短期滞在型へ変更し、10月以降は毎週末、学生に参加を呼びかけました。
その結果、令和8年2月までに49名が参加し、39名が複数回訪れるリピーターとなりました。学生の生活に合わせて参加方法を柔軟に設計したことが、継続的な関わりにつながりました。
▲森林について学ぶ学生が、町内の森を散策するミニツアー
▲9月のツキガタイケンを起点に、月ごとに分野を変えながら週末の活動が続いた(月形町作成資料より)
▍ 「地域として何を解決したいか」が定まらず、方向性が曖昧に
一方、立ち上げ当初は、「地域として学生と何を解決したいのか」が十分に整理されておらず、フィールドワークの方向性が曖昧になる場面もありました。
試行錯誤を通じ、事業の初期段階で地域の課題と期待する成果を共有し、学生と地域が共通のゴールを持つことの重要性が明確になりました。この学びは、次年度以降のプログラム設計に生かされています。
▲地域で見つけた課題やアイデアを付箋で洗い出す学生たち(左)、ふるさとミライカレッジ事業オープニングの様子(右)
取組の成果と今後の展望
令和8年度以降は、北海道大学との連携に加え、農業分野でタイ・ランシット大学の学生を受け入れるなど、フィールドワークを広げます。週末型の受入れも続け、リピーターとの関係を深めていく方針です。
ツキビズキャンプは令和8年度で4回目を迎え、修了生が空き店舗を再生して店を開くなど、挑戦が次の挑戦を生む動きも現れています。町出身の参加者がUターンし、地域おこし協力隊として教育・福祉分野を支える事例も生まれました。
今後は、まちのいりぐち代表・西岡氏に負担が集中しないよう、学生の受入れに協力する地域事業者や、大学側の連携窓口を増やしていきます。
あわせて、継続的な財源を確保し、生まれた事業や商品が地域内で循環する仕組みづくりも課題です。
▲整備後の共用スペース(左)、住民が集う町内のイベント(右)
▲未就学児から社会人まで、多世代にわたる関係人口づくりの全体像(月形町作成資料より)
月形町が長期的に目指すのは、未就学児から社会人まで幅広い世代が地域と関わり、町外から訪れる人と住民が日常的に行き交う状態です。町に関わるすべての人々がともに考え、ともに行動し、それぞれの役割を担いながら、誰もが活躍できる地域社会をつくります。
*1 関係人口とは、移住した「定住人口」でも、観光で訪れる「交流人口」でもなく、特定の地域に継続的な関心を持ち、さまざまな形で関わる人々のことです。地域づくりの新たな担い手として注目されています。
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