no imageふるさとミライカレッジ 事務局

 

--目次--

  • 調査分析の観点を持つ背景
  • 観点1: 構築してきた「体制」と、そこに至る「経緯や転換点」
    • 関係者を整理する四象限の枠組み
    • 体制上の関係性
  • 観点2: 多様な主体が関わる「共創まちづくり」のイノベーションプロセス
    • 「共創人口」への注目
    • 「共創まちづくり」特徴

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調査分析の観点を持つ背景

 大学と自治体との連携に当たっては、すでに一部地域では取組が進んでいるものの、「プロジェクトの成果が見えない・わかりにくい」、「プロジェクト実施のためのノウハウが不足している」といった課題があります。

 とりわけノウハウ不足については、地域ごとに実態や課題が多様であり、方法や手順を単純に模倣して横展開をすることが難しいなかで、先進事例のプロセスをどのように再現すればよいかが分かりにくい点が原因であると考えられます。

 そのため、ふるさとミライカレッジの取組を全国に普及させるため行った本先進事例調査分析においては、これから取組を始めようとする各自治体が参考とできるよう、以下2つの観点で分析・整理しました。これにより、ふるさとミライカレッジの取組拡大のみならず、すでに取り組んでいる自治体においてもより質の高いプロジェクトの実現に寄与することをめざしています。

 1つ目は、構築してきた「体制」と、そこに至る「経緯や転換点」です。
これらの観点をもとに、現在の体制がどのような経緯や転換点を経て構築されたのかを分析、整理しました。

 2つ目は、多様な主体が関わる「共創まちづくり」のイノベーションプロセスです。
この観点で整理することで、ふるさとミライカレッジの取組拡大だけでなく、すでに取組を進めている自治体や大学等にとっても、より質の高いプロジェクトの実現につながることをめざしています。


 

観点1: 構築してきた「体制」と、そこに至る「経緯や転換点」

 各事例のプロセスは一つとして同じではなく、いずれも複数の要因が重なり合いながら、時間をかけて現在の形へと発展してきています。本事例集では、そうした複雑な歩みのなかにある「経緯や転換点」、「体制」を事例ごとに簡潔に整理しました。読者の皆様には、ご自身の地域における実態や担当としての立場との類似点・相違点を意識しながら、それぞれの事例において「どのプロセスが自らの実践に応用し得るのか」を考えつつ読み進めていただきたいと思います。

 また「体制」については、共通的な役割が見出されたことから、以下のような共通の枠組みを用いて整理しています。

 

 枠組みの見方や体制上の関係性について簡潔に解説します。

体制整理に活用した共通の枠組み

 

 

関係者を整理する四象限の枠組み

 ふるさとミライカレッジの実行にかかわる主体は、所在地(活動拠点)が「地域内・地域外」のいずれか、役割が「運営/調整役・課題解決主体」のいずれかに分類できます。本事例集では、これらを四象限で整理・表現しました。

 所在地(活動拠点)が地域内の関係者としては、地方自治体や地域住民/地域事業者等が想定されます。一方、地域外の関係者としては、大学や学生が中心であり、その他に都市企業等が関与するケースもみられます。また、中間支援組織等については、地域内・地域外いずれに位置づけられる場合も想定されます。

 役割のうち課題解決主体とは、ふるさとミライカレッジにおいて“地域課題を解決するプロジェクトを実行する主体”をさします。運営/調整役は、課題解決主体がプロジェクトを円滑に推進できるよう、主に調整(コーディネート)を担う役割です。なお、運営/調整役が課題解決主体としても機能するケースも多く見受けられます。

 

 

体制上の関係性


 

観点2: 多様な主体が関わる「共創まちづくり」のイノベーションプロセス

 「共創」は、2000年代前半から海外のマーケティング分野で着目されてきた新たな概念です。従来の「受け手」とされてきた消費者や顧客、住民などと企業や組織が対等な立場で連携し、製品やサービス、価値を共に創造する営みをさします。その後、「受け手」に向けたサービスデザインが必要となる公共政策や教育、医療等の様々な分野に波及しました。日本のまちづくり分野においても2010年前後に登場し、これまでのまちづくりの構造が転換しつつあります。

 その登場の背景には、複雑化する地域課題に対して地域住民や行政だけによる対応では限界が見え、より多様な主体による創造的なアプローチで課題解決に取り組むことの可能性が追求されています(小泉, 2025)1。ただし、まちづくりにおける「共創」の定義は明確なものがないため、本事例集においては、「様々なタイプのアクターが関与する協働プロセスとして行われるイノベーションや価値創造」(Lund, 2018) 2とします。

 

 

「共創人口」への注目

 そこで地域課題解決の担い手として期待を寄せるのが、関係人口です。「関係人口」は、特定の地域に継続的に関心を持ち、関わるよそ者(田中, 2021)3とされています。ふるさと納税等の消費型から、地域づくりの担い手として活躍する直接寄与型まで幅広な関わりを含みます。特に大学等による域外者の関わりによって「交流の鏡効果」(小田切, 2014)4等の様々な相互作用が生じ、域内の主体も地域を顧みる機会を持って変容します。

 本事例集では、こうした変容プロセスの中で、つくり手として以下の図のように多様な主体と関わりイノベーションを起こす人材を「共創人口」と呼び、注目することとします。この新たな概念枠組みは、関係人口論で注目されてきた域外の主体だけを対象とするのではなく、域内の主体をも含むものである点に独自性があります。受動的に・消費者として関わる人口から、能動的に・つくり手として関わる人口への転換です。こうした共創人口が域内外の関係主体によって構成される体制の中に存在し、相互に影響し合いながら共に成長することで、プロジェクトの成長や持続性に寄与するものと考えています。これを仮説的に「共創人口創出モデル」として、呼称していきます。

域内の主体が関係し合う共創のフレームワーク

 

 

「共創まちづくり」特徴

 地域×大学等による課題解決プロジェクトを通じて、学生だけではなく、関わる様々な主体が「共創人口」として持続的に関わり続けるポイントが各先進事例に多く見られます。そうした本事例集を読み解く、共創性を高めるための観点として、「共創まちづくり」の5つの特徴を以下に示します。

図  共創まちづくりの5つの特徴

 

 これらの観点が相互に影響し合いながら、人を育み、ネットワークを強化し、既存の地域資源が再評価され、日常の新たな革新が生まれる。そうした関係性が様々なかたちで体現されている(またはされつつある)事例を本事例集では扱っています。今後のふるさとミライカレッジ事業の推進、ひいては地域活動全体の活性化の一助となれば幸いです。

 

小泉秀樹. (2025). まちづくりの構造転換 序論:参加・協働,関係そして共創へ. 都市計画, 374(3). 30-35.

Hedensted Lund, D. (2018). Co-Creation in Urban Governance: From Inclusion to Innovation. Scandinavian Journal of Public Administration, 22(2), 3–17. https://doi.org/10.58235/sjpa.v22i2.11422

 田中輝美. (2021). 『関係人口の社会学―人口減少時代の地域再生』. 大阪大学出版会.

 小田切徳美. (2014). 『農山村は消滅しない』. 岩波新書.

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